IRC 横浜国立大学 学際プロジェクト研究センター / Yokohama National University, Interdisciplinary Research Center

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 中尾 航 Wataru NAKAO

   職名:特任教員(助教) 平成23年度から工学研究院准教授
   専門:材料工学、材料強度学、高温物理化学
   連絡先:045-339-3692   Email:
   居室:工学基礎研究棟201
   (学際プロジェクト研究センター助教スペース2)

■研究テーマと概要■

表面き裂を自己治癒するセラミックスの創生

 表面き裂(ひび割れ)を自己治癒するセラミックスは,極めて安全・安心性の高い構造用セラミックスです. セラミックスは,比強度(単位重量当たりの強度)に優れ,また耐熱性にも優れることから, 高温で用いる構造材料・機械材料として大きな潜在能力を有しています. しかし,使用中に表面き裂が発生すると強度が大幅に低下するために信頼性の低い材料です. したがって,表面き裂をセラミックスが自発的に治癒(修復)することは, 構造用セラミックスの致命的な欠点を克服することに対応します.

 次の3条件をみたすことで,セラミックスは使用中に発生した表面き裂をその場で治癒し無害とすることができます.
(i)自己治癒現象は,使用環境中で発現する.
(ii)き裂発生を材料自身が感知することで,機能が発現する.
(iii)治癒された部分は,その他の部分よりも強度に優れる.

 高温大気中で用いる部材であれば,上記3条件を満たした自己治癒能力を発現することが可能です. 図1にその機構を模式的に示します. この自己治癒には炭化ケイ素の酸化を活用するため, 母材に炭化ケイ素が一定量(15vol%)以上複合されていることで機能が発現します. 使用中(例えば1200℃,大気中)に表面き裂が発生した場合を考えます. 表面以外の炭化ケイ素は酸化せず(実際には,極めて遅いだけ)に存在している. このため,表面き裂が発生するとき裂面に存在する炭化ケイ素は初めて酸化します. この酸化反応によって,まるでかさぶたができるように,表面き裂を治癒します.

 しかし,この機構が有効な温度範囲は極めて限られているため,実用化には未だ程遠いのが現状です. このため,この限定された温度範囲を拡張し,この材料を実用化することが現在の課題です.

 本研究は、平成21年度科学技術分野の文部科学大臣表彰にて科学技術賞をいただきました。

き裂治癒模式図

図1.表面き裂の自己治癒

セラミックス摺動部材用の新規表面改質技術の開発

 セラミックス(主に窒化ケイ素)転動体を用いた軸受けは,セラミックスの低摩擦,高剛性などの優れた特性により, 超高速回転,超高精度を実現し手います.これにより,航空機タービン主軸や工作機械主軸用として利用されています. しかし近年,現状の材料では対応できない,無給油環境・腐食環境・高温環境での利用が求められいます. そこで,これらの極限環境に対応可能な酸化物セラミックスによって, 窒化ケイ素と同等以上の摺動特性を有する材料を開発することが目標です.

 耐環境性能に優れるアルミナに,き裂治癒と低エネルギー電子線照射からなる表面改質を施すことで, 摺動部材として極めて有望な材料を開発し手います.この材料は,表層に存在する既存のき裂を完全に治癒し, 急速破壊の要因を全て取り除かれています.それだけでなく,電子線照射によって約1.5倍の硬さまで硬化した層を有しています. しかも,この硬化層は,内部から連続的に硬さが向上しているため,剥離を問題とする必要がありません. これらの特性から,耐環境性能に優れ,高い安全性を有しかつ, 高剛性,低摩擦なセラミックス転動体として期待できます.現在はこの材料の磨耗特性を調査しています.

セラミックス摺動部材

図2. 表面改質により形成される高機能摺動セラミックス

■主な公表論文など■
  1. W. Nakao, K. Takahashi and K. Ando, "Chapter 6, Self-healing of Surface Cracks in Structural Ceramics in Self-healing Materials; Fundamentals, Design, Strategies, and Applications" Ed., S. K. Ghosh, (2009), WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, Germany, pp. 183-217.
  2. W. Nakao, Y. Tsutagawa and K. Ando, "Enhancement of In-Situ Self-Crack-Healing Efficient Temperature Region by SiC Nano-Sizing" Journal of Intelligent Material Systems and Structures, Vol.19, No.3, pp. 407-410, 2008
  3. 中尾航,千葉洋平,安藤柱,高橋宏治,岩田圭祐,西義武, "表面硬化高強度セラミックス及びその製造方法" 特願2007-240484, 2007
  4. W. Nakao, S. Mori, J. Nakamura, K. Takahashi, K. Ando and M. Yokouchi, "Self-Crack-Healing Behavior of Mullite/ SiC Particle/ SiC Whisker Multi-Composites And Potential Use for Ceramic Springs" Journal of the American Ceramics Society, Vol.89, No.4, pp. 1352-1357, 2006
  5. W. Nakao, and H. Fukuyama, "Single crystalline AlN film formed by direct nitridation of sapphire using aluminum oxynitride buffer" Journal of the Crystal Growth, Vol.259, No.3, pp. 302-308, 2003