IRC 横浜国立大学 学際プロジェクト研究センター / Yokohama National University, Interdisciplinary Research Center

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 鈴木 敦 Atsushi SUZUKI

   職名:特任教員(助教)平成24年度から工学研究院准教授
   専門:分子発生生物学
   連絡先:045-339-4264
   Email:
   居室:生物電子情報棟408

■研究テーマと概要■


私達の体を構成する全ての細胞は、母親由来の卵と父親由来の精子が融合した一つの受精卵から発生します。その数は約60兆個、種類は数百にのぼると言われていますが、大きく分けるならば体細胞系列と生殖系列のたった2種類とも考えられます。体細胞系列は私達の生存に必要な全ての器官・組織を構成する体細胞を産み出しますが、私達の死と共に一代で消滅します。それに対して、生殖系列は私達の生存にこそ関与しませんが、卵や精子といった生殖細胞を産み出すことで再び受精卵となり、世代を超えて生き永らえると見ることもできます(図1)。このような性質を持つ生殖細胞は、いったいどのような機構で発生し、分化するのでしょうか。その形成機構を分子のレベルで明らかにすることを目標に研究を行っています。

図1

図1.細胞の一生
体細胞は死とともに一代で消滅するが、生殖細胞は再び受精卵となって生き続ける

(1) 生殖細胞におけるRNAバイオロジー

遺伝子の機能は「DNA→RNA→タンパク質」と伝えられるという考えは20世紀の分子生物学で確立され、セントラルドグマと呼ばれていました。しかし、逆転者酵素の発見や、近年のnon-coding RNAの様々な機能の解明によりその概念は修正され、代わってRNAを基盤とした未知な領域が現れてきました。特に、生殖細胞には特殊なRNAが存在し、そのRNAが発生や分化に重要な役割を持つことが示されています。このことから、生殖細胞には他の細胞にはない独自のRNA制御メカニズムがあると考えられています。


(2) 生殖細胞の性分化(卵になるか、精子になるか)を制御するNanos2

我々ヒトを含む哺乳類において、男(オス)になるか、女(メス)になるかという重要な問題は、遺伝的に決まっています。オスにはオス特異的な染色体(Y染色体)があり、この染色体に乗っている遺伝子の機能によりオスでは精巣が形成され、それをもっていないメスでは卵巣が形成されます。そして、この中で次の世代に受け継がれる重要な生殖細胞、精巣では精子が卵巣では卵が分化してきます。しかし、これらの生殖細胞の性は実は遺伝的に決まっているわけではないのです。生殖細胞は発生の初期過程で非常に特異的な場所でつくられ、移動して将来の生殖巣の中に入ってきます。この移動期の細胞は始原生殖細胞と呼ばれ、精子・卵子のどちらにも分化する能力を持っています。しかし、その後、精巣に入った細胞は精子に、卵巣に入った細胞は卵子へと分化していきます。私は、マウスを用いて、この生殖細胞の性決定に関与する遺伝子であるNanos2に注目して研究を行っています。

図2

図2.Nanos2によってオス化したメスの生殖細胞
赤:メス生殖細胞特異的遺伝子
緑:Nanos2

■主な公表論文■

  1. Nanos2 suppresses meiosis and promotes male germ cell differentiation.
    Suzuki A, Saga Y. Genes & Development. 2008 Feb 15;22(4):430-5.
  2. Functional redundancy among Nanos proteins and a distinct role of Nanos2 during male germ cell development.
    Suzuki A, Tsuda M, Saga Y. Development. 2007 Jan 134(1):77-83